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更新日時:2012年11月20日 00時00分

星野 源インタビュー/終わりのその先。そこにあるはずの希望―ニューシングル「知らない」リリース【1】

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VA12月号

VA12月号

軽やかな存在感とリスナーを豊潤に満たす歌で、今最も注目を集めるシンガーソングライターとなった星野 源。
彼はもともと人気インストバンドSAKEROCKのリーダーであり、また松尾スズキが主宰する“大人計画”に所属する俳優としても舞台や映画、テレビドラマに数多く出演している。さらには、雑誌などで多数の連載を持つ文筆家でもある。多方面で才能を発揮する星野の核心的な魅力を味わえるのが、ソロ作品で奏でられる歌だ。
渾身のバラードとなったニューシングル『知らない』についてじっくり語ってもらった。
INTERVIEW&TEXT:SHOICHI MIYAKE PHOTOGRAPH:KENTARAO OSHIO

 この時代、この国で生活する僕らにとって、星野 源の歌は良心のように存在している。いや、何も彼の歌が品行方正なものだと言いたいわけではない。むしろ、現行のJ-POPシーンに照らし合わせれば、星野の歌はひと際いびつな存在感を放っている。何気ない素振りの叙情性とユーモアに彩られた星野の歌から得る感触は、平熱の体温に満ちていて、それゆえにとても生々しい。僕らが日常の営みから覚えるのと同じ強さと角度で、喜怒哀楽と、そのどれにも当てはまらないまま彷徨う感情の機微を映し出し、愛おしい人の体臭さえ思い起こすようなリアリティをもって性の匂いを感じさせ、ある瞬間にどうしようもなく実感してしまった生と死にまつわる喜びや恐怖を響かせる。情報だけではなく、人が生み出した創作物さえも次から次へと消費されていく時代にあって、星野の歌は、その迫真的な熱と筆致をもって豊かな求心力を獲得している。
 今年7月にリリースした3rdシングル「夢の外へ」で、星野は自らが理想とするポップスを具現化するために一歩前へ踏み込んだ。ゴージャスなストリングスとカントリー然としたバンドサウンドが絡み合い、かつてないほどダイナミックなポップネスを響かせたのである。個々人が抱く大切な夢を現実世界へ連れ出す、という歌詞も豊潤なポジティヴィティに満ちあふれていて、とてもフレッシュだった。
「『夢の外へ』を作れたことで、ポップスとしてひとつ天井を突き破れた感じがあって。ここからどこへでもいけそうだなって思いましたね」

 待望のニューシングル「知らない」の表題曲は、「夢の外へ」と同じ編成で、力にあふれたバラードを編んでいる。アコースティックギターとスティールギターとピアノが鷹揚なリズムとともに静謐なアンサンブルをつづり、そして、流麗な趣のなかにある種の厳しさも帯びているストリングスの旋律が、サウンド全体をドラマティックに包容する。歌メロはサビに向かって切なさを増すほどに美しく躍動し、星野のヴォーカルも確かな情熱をたたえ、終始聴く者をひきつける。歌詞のテーマは、“終わり”である。しかし、ここで描かれている“終わり”は、幕引きを示すものではない。ひとつの結末を迎えてなお、そこから始まっていく物語にこそ思いを向けている。「知らない」という概念を“まだ見ぬ希望”に置き換える、星野ならではの視点と発想の変換力が、歌の背中を支えている。渾身のバラードと呼ぶにふさわしいこの「知らない」を、星野はどのような思いで書いたのだろうか。

【その2へ続く】