更新日時：2012年11月20日 00時00分
星野 源インタビュー／終わりのその先。そこにあるはずの希望―ニューシングル「知らない」リリース【2】
知らない
「今年の夏に悲しい出来事があって。それはとても絶望的なことだったんですけど、そういう状況のなかで、突発的にメロディとコード進行が浮かんだんです。その絶望的な出来事にどう向き合うのか考えて、そこから生まれた曲をどうにかして前向きなものにしたいという気持ちがあって。そういう思いで歌詞を時間をかけて書いていきました。この曲も自分なりのポップスにしたかったんです。たとえば『夢の外へ』は童貞の友達がきっかけで生まれた歌ですけど（笑）、それって普通に考えれば、ポップスのテーマからはかけ離れているじゃないですか。もちろん『知らない』の歌詞はすごくシリアスなんだけど、なんとか楽曲の力やメロディの力強さでポップスに昇華できないかな、と思ったんです。人がその時に感じた絶望の先を描きたいなって。だから、曲調は異なるけれど、『知らない』も『夢の外へ』と同じレールの上で、楽器陣も同じ編成で演奏しようと思ったんです」
曲の成り立ちを思えば、やはりというべきか、作詞はかなり難航したという。
「僕が歌詞に行き詰まって、苦悩している様子が初回盤に付いてくるDVDの制作ドキュメントに収録されちゃっているんですけど（笑）。この曲ができたエピソードを知らない人が、たとえばテレビで聴いても普通に楽しんでもらえるような曲にしたかったから、そのバランスがすごく難しかったですね。“さよならはまだ言わないで”とか、J-POPの常套句のようなフレーズを織り交ぜながら、そこに自分の嘘のない気持ちを重ねたかったんですよね」
その苦心の果てに、“終わり”の続きに待っている「知らない」という希望を導き出した。
「“灯り消えて気づく光 ただ夜の中に 君が消えて見えるものも あるんだな”という冒頭のフレーズを思いついた時に『あ、この歌できた！』と思えました。この曲のミュージックビデオは、エンドロールから始まるんですね。映画でエンドロールのあとにちょっとしたエピソードが入る作品ってあるじゃないですか。僕、あれが大好きで。“終わりの先”を観せてくれることにワクワクするんですよね。“終わり”ってどうしても悲しいものとして捉えがちだけど、その先にはワクワクするようなことも待っているはずで。すごく悪い言い方をすると、僕は昔から早く死にたいという思いと、いつまでも死にたくないという感覚が同時にあって。それってうまく処理できない感覚なんですけど、それをちょっとでもいいものとして表現したいと思うんです。ポップスってそれができる音楽だと思うし…もうちょっと明るい話もしましょうか（笑）！ …僕、冬なのに女性がショートパンツを履くことにすごくグッとくるんですけど（笑）」
――これが、星野 源という愛すべきシンガーソングライターである。「知らない」はこれまでのシングル同様、全4曲を収録。“ダンス”をテーマにしたリズミカルなポップチューンM2「ダンサー」。ベースにハマ・オカモト（OKAMOTO’S）、ドラムに神谷洵平（赤い靴）を迎えたトリオで星野曰く“川口のソウルミュージック”を鳴らした、メロウグルーヴが心地いいM3「季節」。春に思いを馳せるささやかなグッドソングM4「おもかげ（ House ver.）」は、カップリング恒例の自宅（ハウス）録音によるもの。4曲を通して多面的な“星野節”を堪能できる。初回限定盤DVDには、5月に行われた日比谷野外音楽堂でのワンマンライヴを中心に、「知らない」のミュージックビデオ、そしてインタビュー中でも触れられている制作ドキュメントを収録。このフルボリュームの内容からも、星野のCDパッケージに対する強いこだわりが感じられる。
「シングルが売れないって言われてますけど、必要なのは“K.U.F.U”＝工夫だと思うんです（笑）。これからも頑張っていい曲を書いて、パッケージでもちゃんと工夫して、リスナーのみなさんに楽しんでもらえるCDを作りたいですね」
INTERVIEW&TEXT：SHOICHI MIYAKE
